ブッダ物語29 遊女とカッサパ三兄弟
ブッダは、まず鹿園からウルヴェーラまで、ゆっくりと旅をした。
その途中、とある森で休もうとすると、たまたま一団の人々がそこで遊山を楽しんでいた。
三十人の男はそれぞれに妻を伴っていたが、その中に一人だけ、遊女を連れた者がいた。
この遊女は誰にも気づかれずに連れの男の荷物を盗むと、逃げてしまった。
やがて、盗みが発覚し、皆は遊女を探しに出かけた。
あわただしく探し回っているうちに、木の下に座っているブッダに出会った。
これまでの出来事を説明し、遊女を見かけなかったかたとたずねると、ブッダは答えた。
「女性を探し求めるのと、自己を発見するのとではどちらが大事だと思いますか」
おそらく、この答えは意外であったに違いない。しかし、人びとは、自己の発見のほうが価値があると同意したのであろう。
遊女を探すのをやめて、ブッダの話に耳を傾けた。
やがて、全員がブッダの教えに帰依し、男たちは僧団に加わった。
また、ウルヴェーラには、有名な三人の聖者がいた。
その宗派の人びとは、特殊なやり方で髪を結(ゆ)っていたので、結髪の苦行者たち(結髪外道)と呼ばれた。
三人はカッサパと言った。
中でも有名なのは、ウルヴェーラのカッサパで、五百人弟子を従えていた。
他の二人は、ナーディー(川)のカッサパ、ガヤーのカッサパといい、それぞれ三百人と二百人の弟子を従えていた。
三人は弟子とともにブッダの教えを聞き、僧団に加わった。