ブッダ物語35 カーストの問題2 義弟ナンダ王子
もう一つの話は、スニータという不可触民にまつわるものである。
彼の仕事は道路の清掃であり、これによって辛うじて生計を立てていた。
適当なねぐらもなく、スニータは自分が働く道ばたで寝泊まりしていた。
また、たまたま通りがかる身分の高いカーストの人たちを汚さないように、常に注意しなければならなかった。
そうしないと、厳しいむち打ちの刑が待っているからである。
ある日、忙しく道路を掃いていると、ブッダが大勢のお供をつれてやって来た。
スニータはすぐに隠れようとしたが、間に合わず次の策をこうじた。
つまり、壁にピタリと体をつけ合掌したのである。
どころが、ブッダは彼の元へ真っ直ぐ向かってきた。
そして、ブッダは、優しく彼に語りかけ、入団を勧めたという。
このように、カーストなどの身分に関係なく入団を認めたのが、当時のブッダ教団の特徴である。
父スッドーダナ王は、ブッダがラージャガハに滞在しているのを知り、使者を送り、故郷のカピラヴァストゥを訪れて教えを説くようブッダを招待した。
しかし、九度にわたる使者は、呼び戻すどころか、そのまま全員僧団に加わってしまった。
ついに、王は、シッダールタの幼なじみ、カールダーインに派遣した。
これには、さすがにブッダも耳を傾け、7年ぶりにカピラヴァストゥに帰省することとなった。
シッダールタの義弟に、ナンダ王子がいた
その頃、スッドーダナ王は、彼に後を継がせる望みを抱いていた。
ナンダは三十五歳になり、王女との結婚を取り決めていた。
しかし、その結婚式で、彼は、ブッダに僧にならないかとたずねられ、僧侶になってしまった。
結婚式当時に出家したナンダは、苦行の生活になかなか馴染めなかった。
彼は、残してきた美しい花嫁のことで頭がいっぱいであったからである。
ナンダは、いつも美しい衣をまとい、上品な鉢を持って、托鉢に出かけた。
仲間はそのような彼を気遣い、ついにブッダがこの問題の解決にあたることとなった。
ブッダは丁寧に彼をさとし、徐々に俗世への関心、特に美しい妻への憧れから彼を引き離した。
そして、ナンダは立派な弟子となったのである。