Tendai Taishi Written by Seimin Kimura

ブッダ物語41 子どもに先立たれた母親と、カラシ種の物語【最も有名な逸話】

ブッダの生涯

裕福な家庭に生まれた女性キサーゴータミーは、サーヴァッティーの金持ちの商人と結婚した。しかし、二人の間に出来た最初の子供が一歳の頃病気にかかり、医者を呼ぶ前に死んでしまった。彼女は、深い悲しみのあまり我を忘れて、子供を生き返らせる薬がないかを人々にたずねながら、町の通りをさまよい歩いた。可哀想なことに、悲しむ彼女を助けようとするものは誰もいなかった。やがて、彼女は、一人の賢者に出会い、次のように教えられる。

この世にただ一人、あなたが求める奇跡を叶えてくれる人がいます。その人はブッダといい。今近くの僧院におられます。そこへ行って助けてもらいなさい

彼女は、すぐさまブッダのところへ行き、子供の亡きがらを彼の足元に置くと、自分の悲しい物語を告げた。彼女の話をじっと聞いたブッダは、次のように告げた。

友よ。あなたの苦悩を癒やす方法が一つだけあります。町へ行って、まだ死人を出したことがない家を探し、その家からカラシ種を一粒もらってきなさい

これを聞き、木の実1つで息子が生き返ると思うと、彼女は大喜びで町へ出かけた。そして、最初に見かけた家に立ち寄ると、こう聞いた。

まだ、死人を出したことのない家からカラシ種を一粒もらって来なさいと、ブッダに言われました

しかし、答えはこうだった。

残念ながら、この家ではたくさんの死人が出ています

次の家に行っても、

この家では数え切れないほとたくさんの人が死んでいます

と答えられた。

3軒目、4軒目と町中たずね回っても、答えは同じであった。結局、ブッダの条件を満たすことは出来なかった。そこで彼女は、はじめてブッダが意図したこと、つまり、すべてのものに死は必ずやってくる死から免れることが出来る人間などいないのだ。そして、自分の子どもだけが特別ではないことを悟ったのである。この真理、そしてこの悲しみを受け入れた彼女は、子供の亡きがらを墓地に葬ると、すぐさま仏陀がいる僧院へ戻っていった。そこで、ブッダは彼女に尋ねた。

カラシ種を持ってきましたか?

彼女は答えた。

いいえ。もう探せそうにありません。あなたが、私にお教えになろうとしたことがやっと分かりました。悲しみのために何も見えなくなり、私だけが息子の死によって苦しめられていると思っていました

そこで、ブッダは続けて尋ねた。

ではどうしてここに戻ってきたのですか

彼女は答えた。

真理を教えて下さるようお願いするためです

ブッダは、それに答えた。

人間の世界でも、神々の世界でも、ただ一つの法則があります。つまり、すべてのものは常に移り変わり、永縁のものは存在しない(無常)のです

この言葉によって、彼女は、すぐに僧団に加わり、ついにさとり(涅槃)に達したと言われている。