ブッダ物語7 アシタの予言
王子が生まれたことで、カピラ城では盛大にお祝いがされました。
また、王子の誕生をお祝いするために、国中からさまざまな人が訪れました。
その中に、未来を見通せる神通力(天眼通/てんげんつう)を持つアシタ(Asita)仙人がいました。
「王子は、将来並外れた人物になるだろう!」と予言したのは、このアシタです。
アシタは、シッダールタ王子を見ると微笑み、すぐに泣き出しました。
シュッドーダナ王は驚いて、
「どうして、泣いておられるのですか。何か不吉なことがこの子におきるのでしょうか」
とたずねました。
「いいえ、私が微笑んだのは、将来、必ずブッダ(目覚めた人)になる方にお目にかかれたからです。
私が、泣いたのは、私が生きている間に、このお方(王子)がブッダになり、その教えをお聞きすることができないからです。
王よ。お喜びなさい。この方は、この世でもっとも偉大な人物になるでしょう」
これを聞いたシュッドーダナ王は、深く悩みました。
そうです。王子は王位を継がないという予言が言い渡されたのです。
王は、この予言が本当かを確かめるために、八人のバラモンを国中から集め、もう一度、占ってもらいました。
そのうち、七人はこのような答えを出しました。
「王子がわれわれ俗人(ぞくじん)の世界に留まるならば、世界の皇帝となるでしょう。一方で、われわれ俗人の世界を捨てて、悟り(真理)を求めようと決意するなら、ブッダ(目覚めた人)となるでしょう」
しかし、八番目のコンダンニャ(Koṇḍañña)の意見だけは明確でした。
「王子の未来は一つしかありません。いずれ王子は四つのサインを目にし、その結果俗人の世界を捨てて、悟りを求めて家を出ます。そして、ブッダとなるでしょう」
このコンダンニャは、四人の友人と共に、王子が成長してブッダになることを待つことにしました。
また、このコンダンニャは、ブッダの生涯の中で、後に重要な役割を演じます。
これを聞いたシュッドーダナ王は、ひどく悲しみ、その後、常にこのことに悩まされます。
この話で興味深いのは、「未来を知る」ということは、必ずしもその人を幸福にするとは限らないことです。
ブッダは後に、弟子たちが未来を見通せるなどの超能力(神通力/じんつうりき)の使用を禁止します。
それは、悟りと全く関係がなく、必ず人を幸福にするとは限らないからです。
「未来がわからない」というのは、私たちのにとって、「幸せ」なのかもしれません。
つづく。