ブッダ物語14 第四のしるし
ブッダはついに最後のサインに出会います。
四度目の旅は、絶望的ではありませんでした。
剃髪(ていはつ)した男が、柔らかい朝日に輝くオレンジ色の衣をまとい、鉢を手にして素足で立っていました。
その表情は、今まで見た人達と違い、穏やかで、物思いに耽っているようであり、まなざしはうつむきかげんでした。
王子は、馬を止め、チャンナにたずねました。
「あれは誰だ。人間なのか、それとも神なのか。まるで、この世の悲しみや喜びと関係ないかのように、落ち着き、悠々(ゆうゆう)としているではないか。」
「王子さま、あれは苦行者です。老い、病気、死が人間を苦しめるありさまを見て、人生のなぞを解明しようと、俗世間を捨てた人です。
彼は、洞窟や森の中の仮住まいの他に家がありません。
一日にじゅうぶんな食べ物を請い、質素な生活を送ります。
行い、言葉遣い、思考が清らかにになるように努め、瞑想によって、俗世の苦悩から解放されることを探し求めているのです。
苦行者はあちこちを旅して、いかにしてよき人生を送り、幸福を見出そうとしているのです」
まさにこれは、預言者たちが言った第四番目のサインでありました。
王子は、感動しました。
「私は、あの苦行者のようにならなければならない。
今日、私は家を出よう。そして、うわべだけの快楽に明け暮れた歳月の中では気づかなかった、苦からの解放を探し求めよう!」
「老」「病」「死」の苦しみから解放することが出来るのは何なのでしょうか。
不老不死でしょうか。
それとも、それらの苦しみの原因をつきつめて、その根源を消滅させることでしょうか。
手塚治虫『火の鳥』には、火の鳥の血を飲んで、不老不死を得た者が描かれています。
やがて、彼の肉体は朽ち果て、その精神だけが残り、長い年月、存在し続け、人々は、彼を「神」と呼ぶようになるそうです。
この物語は、「死ねない」という苦しみを描いています。
不老不死を得ることが幸せなのでしょうか。
みなさんは、どのように考えますか。
つづく。