ブッダ物語16 息子ラーフラ
沙門を見て感動した王子は、今度は、宮殿に戻らず、物思いにふけりながら馬車を走らせ、旅の目的地にしていた遊園にたどり着きました。
そして、考えました。
「私は、あの苦行者のようにならなければならない。今日、この日、私も出家しよう。
そして、うわべだけの快楽では気づかなかった苦からの解放を探し求めよう。」
やがて、王子は散歩に飽きて、木陰に腰をおろしました。
そこへ、使者が吉報をたずさえ、馬を走らせ、やって来ました。
ヤショーダラ王妃がたった今、男の子を出産したのです。
しかし、ブッダはその知らせを喜ばす、がっかりして聞きました。
そして、
「また、一つ、私を縛り付けるものがふえた!」
王子は息子をラーフラ(Rāhula)と名付けました。
ラーフとは、古代インド神話では、悪魔の名で、この悪魔が太陽を呑み込むと日食がおこり、月をのみこむと月食がおこると考えられていたそうです。
ラーフラの命名は、祖父にあたるシュッドーダナ王がしたそうです。
つまり、ラーフラにこのような意味があることを王はしらなかったこととなります。
また、「ラーフラ」という言葉自体には、「縛り付ける」という意味はありません。
ブッダが「縛り付けるもの」と叫んだことから、後に、そのような伝説が生まれたのかも知れません。
しかし、息子が生まれても、出家するというブッダの決心は揺らぎませんでした。
ブッダは、息子の誕生を束縛(そくばく)としましたが、それは、息子がこの世で最も愛しいもので、それが、出家するものにとって、最大の障害となったからです。