ブッダ物語23 スジャータの粥
ひとり残されたブッダですが、その肉体は再び本来の黄金色をとりもどし、ブッダになるべき運命を示す三十二の特徴(三十二相)がはっきり現れるまで、体力が戻りました。
そのころ、そのあたりにスジャータという金持ちの娘が住んでいました。
彼女は、たまたま身ごもっており、もし男の子が生まれたら、近くのバンヤンの木の神に特別なご馳走をお供えしますと誓いを立てていました。
バンヤンの木は、太古からインドでは神聖な木とされていたのでしょう。
やがて、スジャータは男の子を出産しました。
そして、そのお礼として、神に捧げる特別な食物の儀式が始まりました。
まず、百頭の牛の乳を搾り、これを五十頭の牛に飲ませます。
それから、その五十頭の牛の乳を二十五頭の牛に飲ませます。
この濃縮作業を繰り返して、ついに、八頭の乳が残るまでになりました。
この濃く栄養のあるミルクを一滴も無駄にしないよう、特別の鍋を使って米を炊きました。
最後に出来上がったものを金の器になみなみとつぎ、スジャータはそれをバニヤンの木に供えるよう召使いに命じました。
一方、ブッダは、バニヤンの木を見つけて、その下に座り、瞑想をしていました。
そして、そこにやってきたスジャータの召使いは、黄金に輝く者が座っているのをみて驚きました。
召使いは急いでスジャータの元に戻り、木の神がみずから供物を受け取るために現れたと興奮しながら告げました。
それを聞いて、急いで木に駆けつけたスジャータも、黄金に輝く者を見て驚きました。
そして、ブッダは、それを受け取りました。
スジャータは、ブッダに乳がゆを供養したことで有名ですが、じつは、一番初めにブッダを見たのはスジャータではなく、召使いだったのです。
また、面白いことに、彼らは、ブッダを木の神と勘違いしています。
それほど、ブッダが神々(こうごう)しかったのでしょう。