ブッダ物語26 初転法輪、四聖諦
ブッダは布教活動をはじめた。
まず初めに、かつて師であるアーラーラ・カーラーマの元に向かった。
しかし、アーラーラ・カーラーマはすでにこの世にいなかった。
また、ラーマの弟子のウッダカも亡くなっていた。
ついに、ブッダは五人の友に会いに鹿野園(ろくやおん)に向かった。
彼らは、禁欲生活に我慢出来ず、安楽な生活の誘惑に負けたブッダを無視しようとした。
しかし、ブッダが彼らに近づくにつれ、彼らはブッダの変化に気づき始めた。
これまで見たことの無い彼の姿に彼らの敵意は知らず知らずのうちに消えていた。
そして、彼らは、ただちにブッダに挨拶に行き、一人が恭しくブッダの鉢と衣を取り、もうひとりは座席を整え、三人目は足を洗う水を急いで取りに行った。
その夜、ブッダは最初の説法を行った。
それは、真理の輪の回転(初転法輪、しょてん・ぽうりん)として知られている。
初転法輪の輪(チャクラ)とは、古代インドの武器の一種であり、転法輪(てんぽうりん)とは、仏教を広めることを、帝王が輪を転じて世界を制圧するのにたとえたものである。
まず、最初にブッダの教えの意味を完全に把握したのは、シッダールタが生まれた説きに彼の悟りを予言したコンダンニャであった。
五人の友人と合流したブッダは、二人の僧が托鉢に出かけている時は、残った二人に説法し、逆に三人が出かけている時は、残りの二人に教えを説いた。
そして、やがて、五人は完全に教えを修得した。
ブッダの教えの要点は、後に師から弟子へ口伝えに伝えられてきた。
それは、八つの正しい方法(八正道)、四つの真理(四聖諦)、五つの執着のあつまり(五蘊)などが中心的な教えであったとして伝えられている。
四つの真理の最初の三つは、ブッダ自身がかつて、王子の快適な生活から悟りの探求に臨んだ過程と対応している。
(1)人生は苦悩の海に満ちている。それは、病気、老い、死の自覚である。(苦しみの真理、苦諦)
(2)これらの苦悩の原因は、苦悩を引き起こす俗世間への執着、欲望である。(苦しみの原因の真理、集諦)
(3)したがって、苦悩を消滅する方法とは欲望を滅することである。(滅諦、苦しみの消滅の真理)
(4)この欲望を取り除く方法を明らかにする。それは八つの正しい方法(八正道)、あるいは中道と呼ばれる。(道諦、苦しみを取り除くための手立ての真理)