Tendai Taishi Written by Seimin Kimura

ブッダ物語33 ウパーリとプンナ

Buddha Life

ブッダの教えに帰依する者には、いろいろな経歴を持ち、あらゆる環境からやって来た。

当時の人びとの目に映ったもっとも著名な帰依者のひとりは、ウパーリ(優波離)であった。

ブッダの時代と同じころ、ジャイナ教の教祖マハーヴィーラがいた。

ジャイナ教は、どんな生きものも傷つけない不殺生(アヒンサー)主義を厳格に守ることであった。

ウパーリはそのマハーヴィーラの高弟であった。

ブッダがナーランダーの近くに滞在していたとき、ウパーリはブッダの説法を聞く聴衆の中にいた。

彼は、とても感銘を受け、ただちに弟子になりたいと申し出た。

彼のような人物を信者として迎えることは、まるで、政治の大臣が野党に加わるようなものであり、ブッダの側近で、政治に感心のあるものは、興奮したに違いない。

しかし、ブッダはそういった考えに感心せず、ウパーリを歓迎するどころか、早まった決断をしないように注意した。

ウパーリは自分の名声にあまり謙虚でなく、ブッダのその反応に驚いたが、そのことで、なおいっそうその決意を固くした。

もう一人の劇的な帰依者は、後に熱心な布教者となったプンナ(富樓那)である。

プンナは、スナーパランタ島出身の商人であった。

ブッダがサーヴァッティイのジェータヴァナ僧院に滞在していたある日、プンナはこの町に隊商を組んでやって来た。一日の仕事を終え休んでいると、大勢の人が僧院のほうへ行くのを見かけた。

なぜ僧院に行くのかをたずねると、ブッダの教えを聞きに行くのだという答えが返ってきた。

彼の人生を変えたのはこの単なる好奇心からである。

そして、彼は、ブッダの説法を一度聞いただけで、現金もこれから売る商品もすべて他の者に譲って正式な僧となった。

次にブッダとプンナとの有名な会話がある。

プンナはブッダの教えを弘めるため故郷へ帰る許しを請うた。

ブッダ「スナーパランタ島は未開で、野蛮な種族が住んでいる。彼らは残酷だ。また、他人をののしり困らせる。もし、ののしられたり、困らされたりしたら、君はどう思うか。」

プンナ「スナーパランタの人びとは善良で、紳士的な人だと思います。少なくとも私を殴ったり、泥を投げたりしません。」

ブッダ「もし、君を殴ったり、泥を投げたりしたらどうする。」

プンナ「善良で、紳士的な人だと思います。少なくとも、私をこん棒や、刀で襲ったりしないからです」

ブッダ「しかし、君をこん棒や、刀で襲ったりしたら、どうか。」

プンナ「それでも、善良で、紳士的な人だと思います。少なくとも、私の命を奪おうとしないからです。」

ブッダ「しかし、もし殺されたらどうか。」

プンナ「それでも、善良で、紳士的な人だと思います。というのは、この腐った屍(しかばね)のような肉体から、私を解放してくれるからです。私にしてくれたことに、感謝しなければなりません。」

ここで、ブッダはプンナの願いを聞き入れ、優しい言葉で彼を送り出した。

「プンナよ。君はこの上ないやさしさと、忍耐力が備わっている。スナーパランタへ行って住みなさい。

そして、君と同じように自由になるには、どの様にしたらいいかを、人びとに教えなさい。」

プンナは故郷へ帰り、最初の雨季が終わるまで、そこで五百人の弟子を集めたと言われている。