ブッダ物語34 カーストの問題
ウパーリやプンナと違って、僧団に加わった多くの者は貧しい下層階級の出身であった。
なかでもアウトカーストは、もっともの貧しく、下級であった。
彼らは、最上層階級のバラモンに近寄ることは固く禁じられていた。
今日でも、アウトカーストである不可触民(ふかしょくみん)の影が指すだけで汚れたと考える因襲的なバラモンもいる。
そのようなことをよく示している次の様な逸話がある。
ブッダがサーヴァッティに滞在する間、従者のひとりアーナンダは、毎日町に乞食に出かけていった。
ある日、彼が僧団に戻る途中、井戸から水を汲んでいる少女を見かけて、水を飲ませてくれるように頼んだ。
少女は、不可触民の中でも最下層に属していた。
娘は「私は身分の低い者です。私には水を差し上げる資格はございません。」と言って断った。
アーナンダ「娘さん。私はあなたの家族やカーストのことをたずねているのではありません。カーストなど気にしませんから、水があれば、どうか少し分けて下さい。」とアーナンダは言った。
そこで、プラクリティというその娘は、アーナンダに水を与え、彼のことをすっかり好きになってしまった。
この話には続きがあり、プラクリティは母親が用意した魔法のほれ薬の助けを借りて、アーナンダに結婚を迫ろうとする。
アーナンダは、一時、彼女にたいへん心を引かれるが、ブッダが奇跡的に介入して救われるのであった。
しかし、プラクリティの恋心は鎮まらなかった。
そこで、ブッダは彼女を呼び寄せ、うわべは、彼女の期待に味方する振りをして教えを説いた。
ついに、プラクリティはアーナンダに対する気持ちを捨て、尼僧として僧団に加わる決心をする。
そして、熱心な信徒になったという。
ブッダが、不可触民の少女を尼僧にしたというニュースは、バラモンをはじめとするサーヴァッティの市民達を驚かせ、心配させた。
そして、彼らは、パセーナディ王に抗議した。
王は、それに応じて、バラモンやクシャトリアたちを引き連れてブッダに会いに出かけた。
そこで、ブッダは、トリシャンクという不可触民指導者の話をした。
彼には、シャールドゥラカルナという学問をつんだ息子がいた。
親として誇りと野心から、トリシャンクは、息子をプシュカラサーリンという名門のバラモンの娘と結婚させようと考えた。
もちろん、バラモンはその申し出を拒否した。
そこで、トリシャンクは、カースト制度が正しいかどうかを彼と議論した。
そして、異なった種に属する動物や植物に見られるような先天的な相違が、カーストの人たちだけにあるわけではないと、トリシャンクは論じた。
さらに、カーストと輪廻や業の教えを結びつけるのは間違っていると論証した。
バラモンは彼の議論に感銘し、ついに結婚に同意したという。
この話を聞いて、人びとの多くは簡単に納得したとは思われない。
なぜなら、現在もこのような差別は続いているからである。
このような、差別はブッダの時代から今の続いているという。