ブッダ物語36 息子ラーフラ
ブッダのカピラヴァストゥ訪問中に家族の中から出たもう一人の有名な帰依者に息子のラーフラがいた。
彼は、ブッダが家を出たちょうどその時生まれた子である。
今や、七歳になるラーフラは、母ヤソーダラに、父ブッダが放棄した遺産を確保するために、近づこうと考えた。
ブッダが到着して、七日目に、ヤソーダラは、ラーフラをブッダが食事をしているところに連れて行った。
彼女はラーフラに、「父上、私が王子です。即位する時、私は王中の王になりたく思います。私に財産を譲って下さい。父親のものは当然息子のものです」と言いなさいと教えた。
ラーフラは、言われた通り、ブッダに伝えた。
ブッダはそれに答えなかったが、歩きながら考えた。
「この子は、私の財産を望んでいるが、それは俗世のもの、苦悩の種にすぎない。
そんなものよりずっとすばらしい財産、私が菩提樹の下で得た、七つの財産を与えよう。」と考えた。
そして、僧院に着いた時、ブッダはシャーリプトラに、ラーフラを正式の僧にするよう依頼した。
その知らせは、長年苦しみ悩んでいたスッドーダナ王に、さらに追い打ちをかけた。
王はブッダのところへ行き、今後は、両親の許可なしに子供たちを僧にしないよう強く懇願した。
ナンダが出家し、そして、ラーフラまでも僧になってしまったからである。
ブッダはその訴えを聞き入れ、その後は、両親か保護者の承諾なしには誰も僧団に加わることを許さなかった。
後になって、僧団に加わるための条件として、妻の承諾が付け加えられる。
ある時、ブッダはラーフラにこう質問した。
「ラーフラよ。鏡は何のためにあると思いますか」
「自分を映すためです」
「よろしい。その通り。身体による行い、言葉による行い、心による行いも、鏡に自分を映し出すものだといつも考えなさい」
と、父が子に教えるように。