護身法解説
こんにちは。
セイミンです。
護身法(ごしん・ぽう)とは、仏さまたちの力をお借りして、身を護(まも)る方法です。
私は、天台宗の法曼流(ほうまん・りゅう)という流派(りゅうは)を修得したので、その解説をしたいと思います。
ちなみに、この記事は、解説ですので、「伝授」(でんじゅ)とは違います。
「免許皆伝」(めんきょ・かいでん)ではないですので、ご注意下さい。
正式な伝授はお師匠さまを見つけて、授けてもらって下さいね。
私も阿闍梨(あじゃり)という資格を持っていますので、伝授することが出来ますが。
阿闍梨は、サンスクリット語でācārya(アーチャールヤ)で、「先生」という意味です。
前置きが長くなりましたが、見ていきましょう!
もくじ
護身法に入る前に
護身法に入る前に、
先ず、浄らかな場所を探します。
清潔で、心が落ち着ける場所ですね。
その場所で、結跏趺坐(けっかふざ)か、半跏趺坐(はんかざ)になって、
5つの印(いん)と、呪文(明:みょう)を唱えます。
今回は、この5つの印と、明について解説します。
座り方
座り方は2つあります。
- 結跏趺坐(けっかふざ):両足を組む
- 半跏趺坐(はんかざ):片足で組む
結跏趺坐(けっかふざ)は、両足を、左右各々の股(もも)の上に置く座り方です。
半跏趺坐(はんかざ)とは、右の足を、左の股(もも)の上に置く座り方です。
どちらも、長時間すると、足がしびれますよ😅
印(いん)と明(みょう)とは
印と明を合わせて、印明(いん・みょう)といいます。
「印」とは、手の指の組み合わせによって、仏さまの力を借りる方法です。
今回も、いろいろな指の組み方が出てきます。
「明」(みょう)は、呪文です。
その手の形(印)に対応した呪文を、口で唱えます。
- 印(いん):手の指の組み変え。
- 明(みょう):口に呪文を唱える。
護身法の手順
護身法は、こんな感じで進みます。
- 浄三業(じょうさんごう)の印明で身体を浄める
- 三部の印明で、仏さまの加護を得ます。
- 被甲護身(ひこう・ごしん)の印明で、鎧を着ます。
順番は、この通りなんですが、ちょっと、専門用語すぎるので、簡単にまとめるとこんな感じ。
- 身を清める
- 仏さま・菩薩さま・明王さまの力を借りる
- 鎧を身にまとう。
戦に行く時の感じかな(笑)
では、見ていきましょう。
1. 浄三業印明(じょうさんごう・いんみょう)
浄三業(じょうさんごう)とは、三つの過去の行いを浄めると言う意味です。
三つとは、身体と、口と、心です。
「身体」を使って人を殴ったり、「口」で悪口言ったり、「心」で人を憎んだり、こんな過去の過ちを浄めます。
専門用語では、身・口・意(しん・く・い)って言います。
おそらく、みんな、覚えがあるはず…
- 身業(しん・ごう):人を殴ったり、手や足で虫を殺したり。
- 口業(く・ごう):人をののしったり、悪口を言ったり、嘘をついたり。
- 意業(い・ごう):人のことを悪く思ったり、恨んだり。
印(いん)を組んで、思い浮かべる
まずは、浄三業の印を組みます。
はじめに、両手を合掌します。
この時、蓮華の花のようにふっくらした感じにします(蓮華合掌)。
そして心に願います。
明(呪文)を唱える
そして、次の呪文を3回唱えます。
おん。そばはば。しゅだ。さるばだるま。そばはば。しゅどうかん。(日本語で唱える場合)
oṃ svabhāva-śuddhāḥ sarva-dharmāḥ svabhāva-śuddho ‘ham.(サンスクリット語)
オーン スヴァバーヴァ シュッダーハ サルヴァ ダルマ スヴァバーヴァ シュッドー ハン
(サンスクリット語で唱える場合)
「すべての存在の本質は、〔本来〕浄らかである。私の本質は、〔本来〕浄らかである」
(サンスクリット語の意味)
これで、体が浄まりました。
最後に、頭の上で、この印を解いてください。←リセットする。
一つの印明が終わると、かならずリセットすることを忘れないようにしてください。
すべての手順はこんな感じ。
- 印を組む
- 心に思い浮かべる
- 呪文を唱える
- 印を解いて、リセットする
2. 仏部三昧耶(ぶつぶ・さまや)
次は、ブッダ、菩薩、明王の力を借ります。
まずは、ブッダから。
「仏」は、ブッダです。
お釈迦さまですね。
「部」は、分類分けという意味です。
ここでは、仏の部門というような意味です。
最後の「三昧耶」(さまや)とは、実は「当て字」で、サンスクリット語の音をそのまま表記(文字にした)ものです。
本来のサンスクリット語は、samādhi(サマーディ)で、
意味は、「瞑想」(meditation)です。
samādhi(サマーディ)→さまーでぃ→三昧耶(さまや)
つまり、仏部三昧耶とは、瞑想で、ブッダを思い浮かべることです。
印(いん)を組んで、思い浮かべる
では、印を組みましょう。
両手を合掌します。
先ほどより、ちょっとおさえめで、ふっくらさせます(虚心合掌)。
人差し指を開いて曲げ、
中指の第1関節に付けます。
親指も開いて、今度は、人差し指の第2関節を押します。
印が完成したら、それを心(心臓部分)に当てて、
心に、
を思い浮かべます。
つまり、お釈迦様(ブッダ・仏)のお姿を思い浮かべます。
細かい特徴の数が挙げられていますが、初級者は、こころに仏さまの姿を思い浮かべるだけでOKです。
明(呪文)を唱える
そして、呪文を3回唱えます。
おん。たたぎゃと。どはばや。そわか。
oṃ tathāgatodbhavāya svāhā.
オーン タターガトードバーヴァーヤ スヴァーハー
「如来の胎内(如来蔵)に、生まれるために」
ここに出てくるtathāgata(タターガタ)って言葉は、仏教ではとても大事で、「如来蔵」(にょらい・ぞう)と訳されるものです。
つまり、仏さま(お母さん)のお腹の中に包み込んでもらうイメージですね。
また、仏さま(お母さん)のお腹の中にうまれて、自分が仏の子となるイメージでもOKです。
3. 蓮華部三昧耶(れんげぶ・さまや)
次は、菩薩さまの力を借ります。
特に、観音さまのお力ですね。
「蓮華」は、ハスの花です。
「印」の形もよく似ていますね。
印(いん)を組んで、思い浮かべる
まず、両手を合掌します。
さっきより、ちょっとおさえめのふっくらです(虚心合掌)。
親指と小指を付けて、他の指は開き、蓮華の花が開いたような形を作ります。
こちらも心に当てて、
を思い浮かべます。
明(呪文)を唱える
そして、呪文を3回唱えます。
おん。はどま。どはばや。そわか。
oṃ padmodbhavāya svāhā.
オーン パドモードバーヴァーヤ スヴァーハー
「蓮華の華を、咲かせるために」
唱え終わると、今度は、印を頭の右側で解きます。
この印は、観音菩薩さまを蓮華に例えたのでしょうか。
それとも、仏さまが乗っている蓮華を意味するのでしょうか。
4.金剛部三昧耶(こんごうぶ・さまや)
次は、金剛手菩薩(こんごうしゅ・ぼさつ)さまの力を借ります。
この菩薩は、手に金剛杵(こんごう・しょ)という武器を持っています。
ですから、名前が、「金剛手」(金剛を手に持つ)ですね。
この武器の種類は3つあり、
両端が、ひとつのものを、独鈷杵(どっこ・しょ)。
両端が、三つに分かれているものを、三鈷杵(さんこ・しょ)。
両端が、五つに分かれているものを、五鈷杵(ごこ・しょ)
といいます。
お坊さんが使う用具(仏具:ぶつぐ)に、実物があります。
印(いん)を組んで、思い浮かべる
この印は、武器をイメージして下さい。
左手を伏せて、右手を仰向けにし、
左手の上に右手を乗せ、両手の背をくっ付けます。
そして、両手の親指と小指を絡めます。
魔を打ち砕く武器が完成しました。
心に、
を思い浮かべます。
明(呪文)を唱える
そして、呪文を3回唱えます。
おん。ばしろ。どはばや。そわか。
oṃ vajrodbhavāya svāhā.
オーン ヴァジュロードバヴァーヤ スヴァーハー
「金剛(ダイヤモンド)〔の武器〕を、生成するために」
唱え終わると、今度は、印を頭の左側で解きます。
ちなみに、vajra(ヴァジュラ)ってよく出てきますが、漢字では「金剛」(こんごう)と書き、「ダイヤモンド」を意味します。
つまり、誰も打ち砕くことの出来ない強固ものです。
被甲護身(ひこう・ごしん)
最後に、カブトを着ます。
甲(こう)は、「かぶと」と言う意味ですが、ここでは「よろいの部分」のいうメージです。
鎧(甲)をまとって(被)身を(身)護る(護)。
印(いん)を組んで、思い浮かべる
印は、かぶとをイメージして下さい。
薬指と小指を組み合わせます。
中指を立てて、指先をくっ付けます。
人差し指は、カギ型に曲げます。
親指は、真っ直ぐ立て、薬指を押します。
印を心に当てて、
と思い浮かべます。
次に、体の五個所に、この印を当てます。
つまり、順番に、鎧を着ていきます。
呪文は、一個所に一回ずつです。
- 額
- 右の肩
- 左の肩
- 心(心臓)
- 喉
これが終われば、頭の上で、印を解きます。
明(呪文)を唱える
おん。ばさらぎに。はらちはたや。そわか。
oṃ vajrāgni-pradīptāya svāhā.
オーン ヴァジュラーグニ プラディープターヤ スヴァーハー
「ダイヤモンド(金剛)の火を燃やすために!」
いざ、出陣!
まとめ
今回は、護身法について解説しました。
最後に、もう一度流れを、おさらいすると。
- 身を浄める
- 仏さまの力を借りる
- 観音菩薩の力を借りる
- 金剛手菩薩さまの力を借りて、武器を手に持つ
- 鎧を着る
こちらが解説されている『十八道』(じゅうはち・どう)というテキストの解説本も作ろうと思っています。
では、また〜。